
イマイカツミ
地域名:北海道富良野市
画家と農家。二足のわらじで自分らしい生き方を求めて
イマイカツミさんは大阪出身で、学生時代はスポーツと絵を描くことに没頭しており、海外に絵を描きに旅行もしていたという。卒業後は東京の出版社に一度就職したものの、24歳の時に絵描きを目指し退職。しかし、画家としての道のりの難しさと大変な日々に疲れを感じていたある日、農業ヘルパーの求人を見て富良野へ移住を決意。単身北海道へ拠点を移し、農業の世界に飛び込んだ。

▲富良野の風景を中心に水彩で作品を描きあげるイマ イさんの作風は、素朴で優しい色使いと、緻密な描き 込みが見る人を引き込む世界観を持ち併せる。
「農作業はルーティンがあるので相乗効果もありリフレッシュできるんです。」とイマイさんは話す。「元々、体を使うのも好きなので、農作業は達成感があって楽しい。目標をクリアしていくのがわかりやすくて、絵を描くことはゴールがわからないけど農業は難しい中でも目標がわかりやすいんです。」と、チャレンジ精神にあふれる姿勢が印象的だ。
当初は少ない面積からスタートした畑も、農作業にのめり込み、気がつくと一人で管理するには大きな規模まで拡大。現在はアスパラの栽培を手掛けながら、画家としての活動を行っている。更に、地元富良野の高校で美術も教えており、とにかくパワフルで多彩な人物なのだ。

▲イマイさんはギャラリー兼宿泊施設「SHEDs」も運営している。体がいくつあっても足りないのではと心配になる
慣れない農業に悪戦苦闘も、新たな「自分らしさ」を追求

▲畑を耕す耕運機は今の畑では広くなりすぎてしまったが、大切にメンテナンスしながら使用している。全てを自分で行うからこそ、収穫の喜びは大きいのだ。
そもそも、最初から全てが順調なわけではなかった。全くの農業未経験、いきなり納得の行く栽培にたどり着くのは至難の業。全て手探りからのスタートである。イマイさんは、当初うまく行かないことの連続だったと振り返るが、それを「楽しかった」と笑い飛ばす。

▲富良野の肥沃な大地で育ったイマイさんのアスパラ。毎日新鮮な採れたてを目当てにお客さんが買いに訪れる。手作業で一つひとつ箱詰めされるアスパラはまるで作品の様に思える。
「農業について知らないことが多いので、改善することがたくさんあって楽しいんです。自分の行いの一つで畑がきれいになって、良いものが育つ姿を見るのがやりがいなんです」。と話す。また、困ったことがあっても協力し会える仲間の存在がイマイさんを支えている。「絵を描く時って、苦しいことやつらいことも全部自分一人で抱え込むんです。でも農業は自然相手に大変な事も、みんなで分かち合えるからいいんです。地域の仲間や連携って、絵描きだけだと得られなかったと思います」。
農業の世界に入り、半農半画家として活動するイマイさんには今大きな目標がある。「自分はこのライフスタイルが気に入っているけど、半農半画家を両立するのは非常に難しい。同じ道を志す人のためにも、将来的に両立を追求していきたい」と夢を膨らませている。
記事の内容は取材当時のものです(2024年8月)。